【秋の季語】『山粧ふ』は秋の季節のことば。意味や由来、使い方・俳句もご紹介します!

季節のことば・季語

秋が深まっていくと、山の木々は紅葉して、色どりあざやかに広がります。

赤や黄色、オレンジなどの暖色系のグラデーションが実に美しいですよね。

このような秋の山のことを『山粧ふ』といいます。

あなたは知っていましたか?

この言葉は【秋の季語】です。

今回は、この『山粧ふ』という【秋の季語】について、解説していきます!

 

『山粧ふ』意味

『山粧ふ(やまよそおう)』という言葉は、
秋の季語です。

意味はつぎのとおりです。

美しい紅葉で彩られた秋の山のことをいう。

出典は中国の画家:郭煕の画論「臥遊録」。『秋山明浄にして粧うが如く』という山を擬人化した一節が季語になった。
秋の山が紅葉に彩られた美しさを、美しい衣を身にまとっているようだとたとえている。
(引用:春夏秋冬を楽しむ 俳句歳時記

 

ルル
ルル

『山粧ふ』って、
秋の山が紅葉でオメカシする様子を
たとえた言葉にゃのね♪

小梅
小梅

つぎは、
『山粧ふ』の由来を紹介するにゃ!

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『山粧ふ』由来

『山粧ふ』という【秋の季語】は、

中国の画家:郭煕(かくき)の画論
「臥遊録(がゆうろく)が由来のことばです。

「臥遊録(がゆうろく)には、つぎのように書かれています。

郭煕の画論「臥遊録」に、
『秋山明浄にして粧うが如く』

という記載があります。
この山を擬人化した一節が秋の季語となりました。

 

「臥遊録」には、秋の『山粧う』だけでなく、

春の山笑う、夏の山滴る、冬の山眠るとすべての四季のことばがあります。

 

「臥遊録」では、春夏秋冬をつぎのようにあらわしています。

中国北宋の画家、郭熙(かくき)
「郭熙画譜」には、四季の山それぞれの特徴として、
『春山淡冶(たんや)にして笑うが如く
夏山蒼翠(なつやまそうすい)として滴るが如く、
秋山明浄
(めいじょう)にして粧ふが如く、
冬山惨淡
(さんたん)
として眠るが如し』とある。
『淡冶(たんや)』とは、ほのかに艶があること。
ここから春の山を『山笑う』、
夏の山を『山滴る』、
秋の山を『山粧ふ』、
冬の山を『山眠る』として季語とした。

(引用:角川俳句大歳時記 春)

 

 

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『山粧ふ』使い方と俳句

こちらでは、秋の季語『山粧ふ』の
使い方や俳句をご紹介します。

①使い方

前のところでお伝えしたように、『山粧ふ』という【秋の季語】の意味は、つぎのとおりです。

紅葉に彩られた山々が、まるで化粧をしたように美しいという意味で、山を形容する言葉です。

 

秋も深まり寒くなってくると、楓や紅葉(もみじ)、トチの木やブナの木などの広葉樹は、赤やだいだい、黄色などに美しく色づいてきます。

一方、杉やヒノキ、松などの針葉樹は、寒い季節でも力強く深い緑色のままです。

 

『山粧ふ』は、ぐっと冷えて秋も深まるころに、広葉樹がみごとに紅葉するさまを言葉であらわしています。

②反対の意味で使う

針葉樹のように紅葉しない木々の山を表現することもできます。

その場合は、『山粧はず』という言葉の使い方になります。

たとえば、つぎのような俳句。

 日光は 杉どころ 山粧はず
(にっこうは すぎどころけ やまよそおわず)
鷹羽 狩行

 

このように『山粧ふ』は、反対の意味でも使うことができます。

 

③『山』以外で使う

『山粧ふ』という言葉は、山や森などの紅葉のことだけではなく、まったく違うものを表現することもできます。

たとえば、秋になり、まあるい林檎が赤く染まるさまを表現するとき。

林檎が赤く色づく様子を、『山粧ふ』の季語を使って俳句を詠めば、

『 秋林檎 朱に染まり 山粧ふ

などと表現することもできます。

ちなみに、『林檎』も【秋の季語】です。

 

このように『山粧ふ』という【秋の季語】は、とっても素敵な言葉ですので、
俳句やそのほか手紙など、ぜひ使ってみてくださいね!

続いては、『山粧ふ』を使用した俳句をご紹介します。

 

俳句一覧

こちらでは、『山粧ふ』を使用した俳句をご紹介します。

 

山粧ふ けものの道も くれなゐに 
(やまよそおう けもののみちも くれないに)
檜 紀代

 

山粧ふとは 橅林の 一樹より 
(やまよそおうとは ぶなばやしの いちじゅより)
稲畑廣太郎

 

山粧ふ 日毎峰より 袈裟がけに
(やまよそおう ひごとみねより けさがけに )
井口 天心
田が海へ ぐいと迫り出し 山粧ふ
(たがうみへ ぐいとせまりだし やまよそおう)
猪又 秀子
山粧う 母の匂ひの 小袖かな
(やまよそおう ははのにおいの こそでかな )
天野きく江
谷底の 朴より山の粧ふらし 
(たにそこの ほおより やまのよそふらし)
皆吉爽雨
ゆけむりを 突き上げて 山粧はず
(ゆけむりを つきあげて やまよそおわず)
阿波野青畝

 

 

『山粧ふ』類語

こちらでは、『山粧ふ』とおなじような意味合いの季語や、関連する【秋の季語】を一覧でまとめてご紹介します!

『紅葉』がつく季語

秋といえば、やっぱり紅葉の季節。

『紅葉』の文字がつく【秋の季語】はとても多くあります。

一覧でまとめましたので、ぜひ参考にしてくださいね!

季語読みかた意味
紅葉もみじ晩秋から初冬にかけて、落葉樹の葉が赤や黄に色づくことをいう。
初紅葉はつもみじその秋、初めて色づいた紅葉のこと。
薄紅葉うすもみじすっかり紅葉しきらずに、薄く紅葉した程度の木の葉のこと。また、そのような色のこと。木の葉が薄く紅葉することもいう。
漆紅葉うるしもみじ漆の木は、中国原産の落葉木で、晩秋に紅葉することをいう。
柏黄葉かしわもみじ柏の葉が色づくことで、黄色から褐色になる。柏紅葉自体には、あでやかさはないが、木が大きくなるだけに紅葉山の彩りになる。
草紅葉くさもみじさまざまな野の草がうつくしく色づき、まるで紅葉のように見えること。古くは、色づいた秋草を錦に見立てて『草の錦』と呼んだ。
蔦紅葉つたもみじ建物の外壁や石垣などに這う植物が、赤や深紅、黄色に染まるさまをいう。夏の青蔦も美しいが、秋の蔦の紅葉も実に美しい。
雑木紅葉ぞうきもみじ山々に群生している雑多な木々の紅葉の総称。晩秋の山に銅色や褐色の紅葉が入り混じる様子をあらわす言葉。
紅葉山もみじやま紅葉で彩られた山のこと。
紅葉の帳もみじのとばり一面に紅葉し、まるで錦のようなさまを帳に見立てていう言葉。
紅葉筵もみじむしろ紅葉が散り、敷いたさまを筵にたとえた言葉。筵とは、わらなどで編んだ敷物のことをいう。
名木紅葉なのきもみじ紅葉の美しい木のことを一括していう言葉。
庭紅葉にわもみじ紅葉に彩られた庭のこと。

 

その他【紅葉に関する季語】

さいごに、そのほかの紅葉をあらわす【秋の季語】をご紹介します。

季語読みかた意味
秋の色あきのいろ秋の景色や、もの寂しい気配。秋らしい色をあらわすこともあり、その場合には、紅葉や黄葉、黄金色の稲穂などをあらわす。
山彩るやまいろどる秋の山を形容したことば。
色葉散るいろはちる紅葉しながら、散りゆく葉のことをいう。
枯野の色かれののいろ晩秋の草木の先の方が枯れはじめ、やがてひっそりともの寂しい冬景色にうつり変わっていくその色合いのことをいう。
黄落こうらく黄葉した木の葉が、とめどなく落ちることをいう。
照葉てりは黄葉した木や草の葉が、日の光に色鮮やかに照り輝くことをいう。
 野山色づく のやまいろづく 秋の季節に草木が紅葉して、はなやかに彩られた野や山のようす。
野山の色のやまのいろ紅葉した野山の艶やかさを愛でる言葉。野山の色を真っ青な空がひと際立たせる。
野山の錦のやまのにしき秋の山野の色とりどりの美しさを錦に見立てていう言葉。

 

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まとめ

今回は、『山粧ふ』という【秋の季語】について、ご紹介させていただきました。

まとめるとつぎの通りです。

  • 『山粧ふ』は、秋の季語
  • 由来は、中国北宋画家の郭熙の画譜『臥遊録』の中の言葉
  • 『臥遊録』の中の『秋山明浄にして粧うが如く』という山を擬人化した一節が季語になっている。
  • 秋の山が紅葉に彩られた美しさを、まるで美しい衣を身にまとっているようだとたとえている言葉。

観念的な表現の言葉ですが、紅葉で山が粧うって、とてもお洒落で上品な表現ですよね。

四季の変化を楽しむことができるのは、日本の魅力ですね^^

『山粧ふ』は時候の挨拶などでも使えることばですので、ぜひ使ってみてくださいね!

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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