『見得を切る』の意味とは?その由来や『見栄を張る』との違いも解説!

ことばの豆知識

『見得を切る』という言葉、あなたは知っていますか?どんなときにこの行為をしてしまいますか?

【見得を切る】とは、ことさら自分の力を誇示するような態度のことをいいます。

 

似たことばで『見栄を張る』という言葉がありますが、あなたは、このふたつの違い、わかりますか?

今回は、【見得を切る】の意味や由来、使い方と、【見栄を張る】との違いを解説していきます!

 

【見得を切る】の意味

【見得を切る】の意味は、つぎのとおりです。

歌舞伎においてのいわゆる決めポーズである『見得』を行うこと。
(出典:日本語実用表現辞典)
ことさら自分の力を誇示するような態度・言動をすること。また、いい所を見せようと無理をすること
(出典:デジタル大辞泉)

 

このように【見得を切る】とは慣用句で、芝居などの見せ場で演ずる目立つ表情や動作、型のことをさします。また、ことさら自分を誇示するような態度や言動のことをいいます。

※慣用句とは、二語以上の単語が結合または、呼応して、一個の定型的な表現として用いられる言い回しのこと。

 

 

ロン
ロン

歌舞伎の決めのポーズを
『見得』って言うんだにゃ。
これって語源かにゃ?

こさめ
こさめ

【見得を切る】の意味は、
大げさな態度や
誇示することだにゃ。
つぎは由来を教えるにゃ!

 

【見得を切る】の語源・由来

つづいて【見得を切る】の語源・由来についてご紹介します。

 

はじめに【見得】という言葉の語源・由来をみていきましょう。
【見得】とは、動詞の『見える』からできた語で、元来は、単に見えることや見える様子という意味です。
『見得』は、歌舞伎役者が芝居の見せ場でする演技をさす。これは役者が動作を一瞬とめて目立つポーズをとるところから言われるようになったもの。
『見得』は当て字。
(参考:語源ものしり辞典)

このように【見得】とは、動詞の『見える』からできたことばで『見え』のこと。【見得】は当て字になります。

 

では、【見得を切る】の【切る】とはいったいどのような意味があるのでしょうか?

【切る】という言葉には、あなたも知っていると思いますが、意味がいくつかありますが、
【見得を切る】の【切る】は次のような意味になります。

 

ほかから、または今までの状態から、際だって、勢いよく行動をすることを『切る』という。それは、取り立てて目立つ振る舞いのときに使う。言葉の使い方としては、『たんかを切る』『しらを切る』などがある。
(参考:岩波国語辞典)

このように【見得を切る】の【切る】とは、勢いよくなにかを『する』ことをあらわす言葉です。

 

【見得を切る】には、『大げさに振る舞う』とか、『虚勢を張る』などの意味がありますが、どれも勢いよく、際立つ行動です。

このように意味をみると、【切る】があわらす『する』という行為がわかりやすくなるのではないでしょうか。

 

【見得を切る】の使い方と例文

【見得を切る】の使い方として例文をいくつかご紹介します。

例文1)

昨日私は、その仕事はすべて自分ひとりで行いますと見得を切ってしまった。

 

例文2)

それくらいのことは簡単にできると見得を切ってしまった。

 

例文3)

舞台での彼は、まるで歌舞伎で見得を切るような大胆な演技だった。

 

【見得を切る】の類語・関連語

こちらでは【見得を切る】の類語や関連語をご紹介します。

類語

【見得を切る】の意味から、類語はつぎのように3つの種類にわけました。

  • 『ことさらに自分を大きく見せる態度のとき』
  • 『大きな口をたたくような言動のとき』
  • 『勢いにまかせる行動のとき』
それでは、この3種類別にそれぞれ類語をご紹介します。
《ことさらに自分を大きく見せる態度のとき》
虚飾、虚栄心、取り繕う、
体裁振る(ていさいぶる)、誇示する、

見せつける、ひけらかす、見せびらかす、顕示する、虚勢を張る、
自信満々、意気揚々、得意満面、
《大きな口をたたくような言動のとき》
言い放つ、はったりを言う、
大口をたたく、大言壮語、啖呵を切る、

ほざく、強がりを言う、放言する、
《勢いにまかせる行動のとき》
威勢がいい、猪突猛進、無鉄砲、
勢いに乗る、

 

 

関連語

つぎに【見得を切る】に関連している言葉をご紹介します。

調子がいい、
しゃちこ張る、
負け惜しみ(を言う)、
荒唐無稽、
嘘も方便、
でっちあげ、
尾ひれをつける、
(内容を)膨らます、
(実態を)ごまかす、
肩ひじを張る、
空威張り、
後先考えない、
度が過ぎる、
行き過ぎる、
肩で風を切る、
仰々しい、

 

 

【見栄を張る】との違いは?!

【見得を切る】と似たことばで【見栄を張る】という言葉がありますが、この2つの言葉の違いは何なのでしょうか?

 

はじめに【見栄を張る】の意味をみていきましょう。意味は、つぎのとおりです。

ことさらに外観を飾る。
うわべを取り繕う。

(出典:精選版 日本語大辞典)

【見栄を張る】とは、自分を必要以上によく見せようとしたり、外見やうわべを着飾ったり、取り繕うことをいいます。

ところで、【見栄を張る】と【見得を切る】の【みえ】。
このふたつの【みえ】に違いはあるのでしょうか?

 

実は、漢字は違うものの、同じことばです。この2つの【みえ】の語源・由来は同じといわれています。

 

【見栄】も、【見得】と同じく動詞の『見える』が語源・由来です。
【見栄】とは、動詞の『見える』からできた語で、元来は、単に見えることや見える様子という意味。
そこから他人によく見えるように自分を飾るという意味に変化し、『見栄』という漢字を当てるようになった。
(参考:語源ものしり辞典)

 

それではつぎに、【見栄を張る】の【張る】についてみていきましょう。

【張る】という言葉には、
力いっぱい押し広げる
内の力を出して伸ばし広げる
しっかりと人に示す対抗する
などの意味があります。
(引用:岩波国語辞典)

【張る】という言葉には、外に力を示す、押し広げる、大きく見せるなどの意味があります。

 

この【張る】をつかった言葉には、ほかにも、『欲を張る』『胸を張る』『意地を張る』などがありますが、どの言葉も外に向けて力を押し広げていくような言葉です。

 

このように見ていくと、【見栄を張る】という言葉は、外側に強く意識が向いていることがわかります。意味も、外側を取り繕ったり、うわべを飾ったりすることであり、とても表面的なことにフォーカスしています。

 

【見得を切る】と【見栄を張る】について、いままで確認してきたことをまとめると、つぎのようになります。

  • 『見得』と『見栄』の語源は同じで、動詞の『見える』が由来。
  • 【見得を切る】は、自分の力を
    必要以上に誇示する態度や言動
  • 『切る』には、勢いよくなにかを
    『する』という意味がある。
  • 【見栄を張る】は、外見を飾り、
    うわべを取り繕うこと。
  • 『張る』には、外に力を押し広げるような意味がある。

 

これらのことからいえることは、どちらも
『よく見せようとしている』ところは同じですが、

 

【見栄を張る】ほうが、より外面的で、外側の目を強く意識しています。さらに、はりぼてのように外側を取り繕う行為なので、弱さや甘さ、自信のなさが見え隠れします。

一方、【見得を切る】は、自分の力を必要以上に強く誇示する態度や言動です。自意識過剰気味で、負けず嫌いで、背伸びをしているような状態ともいえるでしょう。

 

このふたつの言葉の違いが伝わりましたか?

どちらの言葉も、『人にどう見られるか?』『どう見せるか?』を気にしていますが、微妙に意識や行動に違いがあります。

 

余談をひとつ

さいごに余談をひとつ。見栄とお金の話です。

人の性質には2種類の型があって、外向型と内向型の人間がいます。

この2つの型では、お金にたいする向き合い方が違うようです。

 

メンタリストdaigoさんのお話(ロンドン大学の研究)によると、外向型の人は、

お金がある人も、
お金があったけどなくなってきた人も、
もともとお金をあまり持っていない人も、

ブランド物や贅沢品、高級品を買う傾向にあるそうです。

 

なぜだと思いますか?

 

それは、外向型の人は、まさに意識が外側に向いてるので、お金があってもなくても、外の目を気にする傾向にあるからです。

そのために、内向型の人に比べて、ブランド品や贅沢品、高級品を買って外側を取り繕うとする意識が強いといいます。

 

悪い言い方をすれば『見栄っ張り』、

まさに【見栄を張る】行為です。

 

それに比べて、内向型の人は、お金がなければないほど、節約や分相応の暮らしを心掛ける傾向にあります。なぜなら意識が内に向いているので、外側の目にあまり興味がないからです。

わたしはどちらかというと内向型人間なので、この話を聞いて安心しました^^

 

お金があるときに、ブランド物や贅沢品、高級品を買って、外側を取り繕ったり、外見を飾るのは問題ないと思いますが、

お金が無くなってきたり、お金がもともとあまり無い人が、このような行動をすると、ますます貧乏な方へ…。

 

外向型の人は意識が外側に向いているために、お金が無いということを外側(外見など)を取り繕うことによって、心を埋め合わせていく傾向にあるそうです。

 

これこそ【見栄を張る】行為です。

もし、あなたが外向型人間でしたら、このような気質があるので、充分に気をつけてくださいね!

 

まとめ

今回は【見得を切る】という言葉について、解説しました。

そして、【見栄を張る】との違いにもふれていきました。

要点をまとめると次の通りです。

  • 【見得を切る】は、自分の力を必要以上に誇示する態度や言動
  • 『切る』には、勢いよくなにかを『する』という意味がある。
  • 【見栄を張る】は、外見を飾り、
    うわべを取り繕うこと。

  • 『張る』には、外に力を押し広げるような意味がある。
  • 『見得』と『見栄』の語源は同じで、動詞の『見える』が由来。

【見得を切る】や【見栄を張る】ことをしなくても良いように、本当の自信や力をつけていきたいものですね^^

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました